「カラーリスト」
小林重順著  日本カラーデザイン研究所
1,600円+税

“色覚は網膜の視細胞のうち、中心部に多くある錐体細胞の働きで、光の波長を感じとり、それを大脳に伝えて色を感じる”

のだそうです。色の好みは人様々。青・紫などの寒色系を好む人も入れば、私のように、オレンジ・緑などの暖色系をこよなく愛する類もいまして、 ある色を見て心地良いと感じるのは、錐体細胞の違いなのか、心理的なものなのかを知りたいと、強く思ったものです。

以前参加したセミナーでのこと。“自分に似合う色”探しで、参加者のモデルに、いろんな色のチーフを添えての講義で、面白かったのですが、 そのまま会場の参加者一人一人に、「はい、あなたは肌にはこの色の口紅、こちらの方は、この色・・・」と回っていかれました。
私には、一番苦手とする「ピンクの口紅」だそうで、「肌の色ですって? キャラクターはどうなるの!」と、いっぺんに色彩理論が吹っ飛んでしまいました。もちろん、「自分に似合う色」に関してですが。

“カラーリスト”という資格があるくらい、色彩学がいろんな分野で活用され、私たちコーディネーターにとっても、無関心ではいられません。 ただ、好きだとか嫌いといった主観的な感情論でなく、理論としての知識が必要で、数ある色彩論の中で私が“虎の巻”にしているのが、この一冊。
色の好みや、好きな形容詞で知るカラーチャートと、それに伴う心理学、街並やウィンドウディスプレイに見るカラーコーディネートの美しさや心理的効果など、 “机上の理論”でないところが、私に合っていると崇めています。

「色の手帖」  小学館 1,950円

「色の手帖」は、書評で知って購入したもので、 精度の高い印刷された色に、マンセル記号のほか、色の慣用色名と系統色名で記され、慣用色名はその名の由来を、系統色名は基本の色名に 「明るい赤」など、いろいろな修飾語をつけて表されています。

また、古典文学の中で使われた色名を、その一節とともに記載され、パラリパラリとめくりながら、“文学で知る色の世界”に、思いを馳せる楽しみがあります。

会社のイベント案内状作成を担当していて、ひところ選んだ紙の色に、「色の手帖」から引用したコメントを添えていましたが、『晒柿』(しゃれがき)という色名も、そのことがきっかけで、出会いました。

柿渋で染めた濃淡は、どの色も好きですが、“晒柿”は、とくに語感がお気に入りで、 “晒柿”の文献例として、下の一句が挙げられています。

※浄瑠璃・博多露左衛門色伝授-五「うへは、たまとのしゃれがきに、高をの紅葉打ちらし」(1708)


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