「奇跡の林檎」 石川拓治著 / 「自然栽培ひとすじに」 木村秋則著

NHKの“プロフェッショナル 仕事の流儀”に登場した、りんご農家の木村秋則さんの話を聞いたのは、昨年3月の フードオアシス アツミ セミナーの時でした。
久しくテレビを観ていないので、どのようなストーリーなのかは知る由もなかったのですが、今年9月のセミナーでも、ふたたびアツミスーパーの社長さんから、 「奇跡の林檎」(石川拓治著)が発刊されるとのお話が出ました。
“プロフェッショナル 仕事の流儀”が、放映後に大反響を呼び、番組で放送し切れなかった木村秋則さんを、キャスターの茂木健一郎さんの提案で、 ふたたび、ノンフィクッション・ライター石川拓治さんの、一年半にも及ぶ取材をまとめた本です。

この本が、本屋さんに置かれるよりも先に、木村秋則さんの林檎が、アツミスーパーの店頭に並びました。 さっそく買って、皮ごとかじった林檎の、パリッとした食感と、ほどよい酸味と甘さが美味しいこと!
店頭に並ぶこと自体が希有で、それを惜しげも無く丸っかじりしながら、Amazon から届いた「奇跡の林檎」を、家で、通勤途中でも、むさぼるように読みました。

野菜や穀物、果物の殆どが、無農薬栽培可能なのに、林檎の無農薬栽培は、常識以前といわれるほどに難しいんだそうです。
木村秋則さんは、なぜに無農薬の林檎栽培を思いついたのだろうか・・・そう思いながら読み進んでいくと、 本屋さんで、最上段の欲しかった本を棒でつっついたら、一緒に落ちてきたのが、「わら一本の革命」の著者・福岡正信さんの本だった・・・と。

木村秋則さんの一途な想いと、ご家族の深い理解と愛情、周りの温かい人たちに、溜息をつきつつ、時には笑い、胸が熱くなって目頭を押さえたり。
長い苦悩の時を経て、枯れ木のようになった林檎の木が、少しずつ甦っていく。 そして、9年ぶりに白い花が咲いたところの、石川拓治さんの描写が、とても素晴らしいのです。
帰宅途中の信号待ちで読んだ私は、カーステレオから流れる、吉川よしひろさんのチェロ「星メグリノウタ」(宮沢賢治曲)のBGMとともに、まるで映画のクライマックスのように、その光景が目に浮かび、 感極まって、あふれる涙を抑えることができませんでした。

ノーベル賞にも匹敵するほどの業を成し遂げた木村秋則さんと、逞しくよみがえった林檎の木たち・・・
“プロフェッショナル 仕事の流儀”や、石川拓治さんの「奇跡の林檎」を通しての木村秋則さんにふれることで、 多くの人の生き方や、人生観を変えるきっかけになったかもしれませんね。

このあと、木村秋則さんご自身の著書「自然栽培ひとすじに」も読みました。
「奇跡の林檎」では、ドキュメンタリー映画を観てるような感動の連続でしたが、 こちらは、いろんな出来事と模索、気づき、そのあとのことも、淡々と綴られていて、こちらを読んだ上で、「奇跡の林檎」もかなぁと思いました。
木村さんの農法が、いろんな農家に波紋を呼び、受け継いでいかれている報告に、胸が温かくなるのを感じました。