浜松市松城町 106-14  Tel. 053-458-7520
  
 昨年は西三河方面に出かけることの多かった share-gaki ですが、今回は、浜松城と美術館近くにお店を構える、『古美術 神田』さんを訪問しました。
毎年骨董市には出かけても、骨董屋さんに足を踏み入れる機会が少なかった私も、 『そばの横好き』さんに紹介していただいたおかげで、 骨董市ではとても味わえない、豊かな時間を過してきました。

 店主の神田さんは、『和箪笥の美』というサイトをつくられているほどに、和箪笥への思いが熱く、造詣も深く、時代を経た和箪笥のお話を伺っていると、 ドラマの情景が浮かんでくるようでした。

 正面に設えた、一間幅の堂々とした水屋(左)は、欅で出来ており、桟に見える戸板に、手の込んだ仕事振りが伺えます。
伝統の技と“用の美”がみごとに結集した、佐渡の衣裳箪笥(右下)も欅造りで、金物の文様も、それはそれは見事です。
その昔、佐渡では嫁ぎ先のお蔵に衣裳箪笥を納める風習があり、お姑さんや大婆様の箪笥も一緒に置かれていて、 祭ごとの器の出し入れに、近所の人がお蔵に入った際、衣裳箪笥を見て家柄の評価をされたとか。ですから親心として、娘が嫁ぐ時には、りっぱな箪笥を誂て持たせたのだそうです。

 帳場箪笥(真中)は、大切な帳面の収納や金庫の役目を兼ねるだけでなく、店の正面に据えられ、訪れる人の目にとまることから、立派であればあるほどに店の信頼度を現していたとか。 この帳場箪笥は、欅10センチ角の材が惜しみなく使われ、欅の美しい木目も厳選されて、シンプルな意匠が、看板としても充分な貫禄を備えています。
 品格と時代の美しさをそのままに、存在感のあるお雛様。金継ぎすら美しいデザインの酒器や器たち。 “こんなやかんもおつなもの”と惹かれた、レトロ風丸ストーブの上の、茶道で使われる筒型水差し。 18世紀のオランダ、デルフトで焼かれたというアンティークタイルは、「銘々皿としても使ってください」と。白釉の美しさがお菓子やケーキの美味しさを引き立てそう。 花器にも器にも使える、陶片とて美しい存在の古伊万里などなど、暮しの中での使い方と、時代への思い語りを伺ながら、 古伊万里の汲み出しでいただいた美味しいお茶と、ゆるりとした“とき”を過すことの贅沢さをも味わってきました。




 

 逆光で撮ったので、ほの暗く見えますが、この季節は奥深く西日が入るため、店内はとても明るく、 座卓として使われている、漆掛けの美しい水屋戸の上で、器たちが輝きを放っていました。
箪笥類のほか、陶器や筒描(つつがき)、古道具など、「好きなものを集めた」とおっしゃる神田さん。 程よいスペースに、思い入れのある家具や器たちが、これまた程よく設えてあり、観る者の心をも養ってくれそうです。

「ブティックみたいな骨董屋にしたい」というお言葉どおり、“骨董屋”さんにありがちな「敷居の高さ」が感じられなかったのは、温かみのあるお店作りと神田さんのお人柄ゆえ。 時の経つのも忘れて、たくさんお話を伺ったのに、ほんのさわりしかお伝えできませんでしたが、骨董のよさは、やはり触れて観て、お話を伺うことが一番だと思います。
『古美術 神田』は、浜松城と美術館近くです。どうぞお出かけください。案内図は、下記のサイトでどうぞ。(2004.2.1)


古美術 神田

和箪笥の美

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