TALK-TALK タイトル

木村秋則さんの講演会 (2011.7.20)


渥美半島に位置する田原市は、木村秋則さんにとって縁のある街なんだそうです。
「もう時効だから言うけど、大型車の免許が無いまま、10トントラックで大阪まで行った復路で田原へ寄り、キャベツを積んで帰った」と。
その田原市の文化会館で、三菱東京UFJの主催の講演会が行われました。


農薬を使わないで林檎を作るのは常識外と言われるほどに、林檎史の120年は、肥料や農薬が支えてきた歴史でもあったとか。 他の果樹や野菜と比べると、林檎は約3倍もの被害を受けやすいんだそうです。(同じく胡瓜も)
農薬を使わない林檎づくりへの模索期に、幾日も害虫などの生態を観察しつづけて気づいたことのひとつに、 嫌われ者のアブラムシがダニを食べること、そのアブラムシを食べ尽くす虫がいることを発見。それはテントウ虫ではなく、小さなアブの幼虫だった。
道端のタンポポ、農薬散布の畑のタンポポ、木村さんの畑のタンポポの観察で、道端のも木村さんの畑のにもアブラムシは付いてないのに、 農薬散布の畑のタンポポのガク部分に、アブラムシがびっしり。
アブの幼虫は、周囲のアブラムシを食べ尽くすが、農薬散布で一番先に死んでしまうのも、アブの幼虫なんだそうです。

まるで虫が食べたような葉の穴や、葉の周囲の様子が、スライドで紹介されました。
これは虫が食べたのではなく、病気に冒された葉が、エンドファイト(内生菌)によって治癒したあとだそうです。(赤字部分は訂正)
実は、我が家の金柑も、虫がいないのに、スライドで見たような葉の状態なんです。
柑橘類には虫がつきやすいと聞いてたので、夜行性の虫が金柑の葉をカジッてるのだと思っていましたが、ひょっとしたら自己治癒の結果なのかもしれません。

未熟な堆肥を施すと、野菜の葉に硝酸態窒素が残留する。
必ずしも有機栽培がいいわけではなく、未熟な堆肥の弊害もあり、ある市場で硝酸態窒素の含有率を計ったところ、16,000ppm も検出されたことがある。
2,3歳の幼児が、その小松菜の葉を2,3枚食べると死んでしまう量だそうです。(顔が青くなる乳児メトヘモグロビン血症またはブルーベビー症候群とも)

農薬や肥料・堆肥を使わないでつくったお米(ご飯かな)と、JAS有機栽培米、普通栽培(農薬使用)の3種類をビーカーに入れて2週間置くと、 農薬や肥料・堆肥を使わないものは腐らず、他の2種類は腐り、特にAS有機栽培米の腐敗はひどいものでした。
野菜も同じように検査したものが映しだされ、JAS有機栽培の胡瓜は溶けて形がありませんでした。
農薬や肥料・堆肥を使わないでミニトマトをつくると、左右対象に実がつく。分かりやすいように、房ごと収穫して販売してるそうです。

床一面に牛の糞が完熟堆肥化した牛舎を、スライドで紹介。
完熟堆肥であれば、臭いはないし、ハエの卵もなく、極めて清潔である(「想いやり生乳」と同じで、牛の餌も違う)

畑に施した肥料の窒素分は、作物が10~15%、同じく雑草も10~15%、土に20~30%、そして40~50%が大気中にガス化して、環境汚染や異常気象の要因のひとつとも言われている。
また、農薬の使用量において、日本は世界一(2004年のデータ)であり、除草剤もダントツに多い!
土壌消毒で白くなった畑と、その傍らに腐った玉ねぎが転がっている風景は、土が死んで砂漠のように変わってしまった、渥美の畑でした。
雑草を育てるのは土であり、土をつくるのは雑草である。

ドイツのオーガニック栽培の畑で収穫したジャガイモが、ピンポン玉くらいにしか育たないのは、畑の土が硬くなって野菜の根が張れない状態。
その畑の土を50センチ掘って、温度を計ってみると、-10センチの所で、8度低かった。木村さんの畑では、0.4度と、ほとんど変化がないそうです。
ドイツの農場で木村さんが植えたジャガイモは、地元の人が植えたジャガイモと違って大きく育ちました。
ドイツの人たちが15~20センチの所へ、木村さんは5~10センチの浅い位置に植えたんだそうです。 作物も人と同じで、温かい土のほうが心地良いのです。

大豆一粒が、1平米に施した肥料の役目を担っているとか。
野菜と一緒にマメ科(大豆や落花生)を植えるとよいそうで、交互に植える。
または野菜の両側に大豆の、そのまた外側に小麦を植えるとよい。

お米や野菜、果樹などの木村式農法が、木村さんの指導のもとで、全国各地に広がっていて、鹿児島の茶園・下堂園のお茶は、検査しないで輸出されているとか。
弘前大学などでのカリキュラムに取り入れられるようになり、平成23年6月16日に、国連世界重要農業遺産(GIAHS)に、能登と佐渡が指定。
日本では初めてであり、先進国でも初なんだそうです。
「愛知は北海道に次ぐ農業県です。ぜひとも取り組んで欲しい」という木村さんの熱い言葉が、参加された生産者の心に届いたのではないでしょうか。

後世に伝えていかねばという天命でもあるかのような気迫に満ちた木村秋則さんのお話に、参加者は水を打ったように静かに聞き入り、時にはユーモアに笑いを誘われました。
なにかが少しずつ変わっていく・・・農業も、脱原発もで、いい時代へと確かに変わりつつあるのを感じた講演会でもありました。
そうそう、夕張メロンのルーツは木村秋則さん!