三毛猫ロン(2000.10.27)

ある夏の夜のこと。いつまでも鳴き続ける仔猫の声に外を見ると、 野良の母猫が仔猫の傍らで困り果てた様子なのです。 安全な場所へと移動する際、何らかのトラブルがあったのでしょう。 見かねて、わたしは仔猫を保護(息子は拉致だと)することにしました。 今にして思えば母猫は初めての子育てだったようです。
猫を飼うのは初めてです。しかもペットを飼えない集合住宅ゆえに 「鳴かせてはならじ!」と、生後二週間位(体重200g)のひよこみたいな仔猫を 息子たちと付きっきりで育てました。
ウィルス性の風邪で、鼻が詰まってミルクがうまく飲めずに、 哺乳瓶をくわえたまま癇癪を起こしてビービー鳴いていた仔猫ですが、 離乳の頃からピタッと鳴かなくなりました。それで声帯が萎縮したのでしょうか、 あるいはあの夏の夜に鳴き過ぎてでしょうか、 ハスキーボイスになってしまいました。 まさか飼い主に似たなんてことは・・・ないでしょう。たぶん。

イラストレーターでエッセイストの西村玲子さん著『ロンロンママの~』シリーズに あやかりまして、きれいな模様を背負った三毛猫に"ロンロン"(通称ロン)と 名付けました。ワタクシは育ての親"ロンママ" (ついでにおしゃれな『ロンロンママ』にあやかりたくて)です。
ロンは母親似(猫!)の器量良しで、気品さえ漂わせています。 毛繕いが生きがいかの如く、自分はもちろんのこと、 同居猫や私たち家族にまで毛繕いをして回っています。 また母性本能がとっても強くて、後に仲間入りした2匹の猫を、 自分の子のように慈しんで育てました。
さて、天は2物を与えたもうか、美しいうえに智恵が働くのです。 たとえば猫トイレで用を足す際、初めの頃は片足だけフチに乗せ、 現在は四足全部を乗せています。 そのうち洋風便器で・・・なんてこともなきにしもあらず。 (実際にする猫もいるそうですね)
また、引き戸に爪を掛けて開けるのはお手の物。 だから押入には入られないように突っかい棒をしているのですが、 先日のこと、棒を外したまま襖を閉めて振り向くとロンがいました。 「見・た・な~」とワタシ。でもここ数ヶ月入っていないから大丈夫! と高を括っていたら「明け方、押入に進入して遊んでいたよ」と息子の報告。 なんと、お気に入りの和紙のストックが、かじられてしまいました。

日々追われるような毎日の暮らしの中で、ロンのゆったりとしたしぐさが、 やすらぎをもたらしてくれます。ロンは今年4歳ちょっと。 人間で言うと33歳くらいでしょうか。