TALK-TALK タイトル


枯れても味わい深い百合
以前Kitchen 味菜さんのコラムに載せていただいたものです。

ボイスコンプレックス

初めてお会いする人から「風邪をひいてるの?」と聞かれることがあります。
いつぞやは「すっごい声!」と言われたことも。
自分の生の声を客観的に聴くことが出来ないので、“低いトーン”というくらいしか認識していなかったけれど、 私の声はハスキーボイスです。

声にも話し方に伴った美しさというものがあるのですね。
女優の奈良岡朋子さんが、ご自分の声にコンプレックスを抱き(私は大好き!)、 お母様からは「醜い話し方は“口から蛇が出る”と言う。あなたは声がよくないから、 なおのこと気を使いなさい」と注意を受けた話を、雑誌で語っていました。
とても印象に残った話ですが、我が身を振り返ると、なかなかそうもいきません。
その昔、子供を叱っている母なる自分の声をテープで聴かされた時は、 自分でも耳を覆いたくなるような悪声に、愕然としました。以来、ボイスコンプレックスの始まりです。

美声にこしたことありません。
我が家の猫でも甘い鳴き声の子には、つい目尻が下がりますもの。 こと相手の顔が見えない電話の場合は、ずい分印象が違います。
友人に、同じ三河人なのに話し方も声もきれいな持ち主がいて、 彼女の電話応対に気を良くした取引先の方が、「ぜひ一度お目にかかりたい」とやって来たのだそうです。 しかし、声の主が“若い女性”とでも思ったのでしょうか。団塊世代の友人曰く「がっかりしたような様子」で、 それからは電話も掛かってこなくなったと、笑いながら話していました。それでも“声美人”はいいものです。

さて、ボイスコンプレックスだった私にも転機が訪れました。機械音を通した自分の声に、 あれほどショックを受けたはずが、同じ機械でもカラオケは別物と知ったのです。
子供の頃、音域が狭く低いトーンの私は、歌うのが大嫌いでした。 でも自分の声質に合った曲でKeyを合わせて歌ってたら「いい声だね」と言われてびっくり。 これまで「個性的な声」と評されたことはあっても、決して誉められる声ではなかっただけに、 「歌ならイケルじゃない!」という自信すらついたのですから、ハスキーボイスも、まんざら捨てたものではありません。
もうひとつ良いことは、久しく会ってなかった人や、あまり顔なじみのない人でも、話をすると思い出してくれることでしょうか。短所は長所なり。