「日本有機農業研究会全国大会」  「食がもたらす健康障害」 P1

船戸崇史氏 プロフィール

1959年岐阜県生まれ
愛知医科大学医学部卒業後、外科医に憧れ岐阜大学第一学科に入局し、 西美濃厚生病院、羽島市民病院、私立美濃病院、町立木曽川病院などで、専ら外科の技術を習得する。 専門は消化器腫瘍外科。しかし、ガンには(私の)メスでは勝てないと悟り、せめて在宅で最期を看取るお手伝いができたらと、 1994年に岐阜県養老町にて開業。以来、西洋医学のみでなく、東洋医学、ホリスティック医学を取り入れて診療している。 特に在宅医療には力を注いでおり、在宅の看取りも増えている。
日本外科学会認定医、日本消化器外科学会認定医、日本消化器病学会認定医、養老郡医師会副会長、生きがいメディカルネットワーク理事、日本ホスピス在宅ケア研究会評議員

船戸クリニック http://www.f7.dion.ne.jp/~funacli/



講師: 船戸崇史氏


めだかと人間

長生きと健康について、水槽のめだかに例えてみた場合、 一匹のめだかの生命力をあげるため、いい餌、水替えをして環境をを良くしてやる。
めだかがあまりにも増え過ぎて、水質も急激に汚染されてくる。
私たちは今、地球という水槽のなかで増えすぎためだかのようなもの。
ならば、健康を維持するには、どうしたらよいのか?

1.環境を整備して、健康を害する要因を除外する(有害な外因を除く)
2.私たちの体の自然治癒力(生命力)を引き出す

1. 有害な外因を除くとは

■未曾有の環境

1970年前までは、花粉症は無かった。40年前には無かったアレルギー性疾患の増加と癌の増加。
一滴の花粉が体の中に入ると、一滴の鼻水が出る。それが、ドバーと出るのが花粉症。
杉の花粉が悪くなったのか、人の体の反応が異常になったのか。あるいは免疫力が鈍くなったのか、アレルギー反応が鋭くなったのか。
体=食べ物+水+空気・・・実は、この全てが変わってきた。

ダイオキシン・紫外線B・Nox・Sox・電磁波・酸性雨・環境ホルモン・食品添加物の変化・遺伝仕組み替え食品・・・と、 この40年の間に、私たちを取り巻く環境(外因)は様変わりした。

ダイオキシン濃度は、日本が一番。(アメリカは世界で第一のダイオキシン排出国だが、国土が広い)
ダイオキシンの毒性は、人類始まって以来の最強、最悪の人口毒物で、青酸カリの1000倍、日本を揺るがしたサリンの、十数倍もの毒性がある。
ベトナム戦争で使われた枯葉剤が、実はダイオキシンで、体から半分出て行くのに10年は掛かる。
サリンは一日で無毒化できるのに、ダイオキシンは100年掛かり、しかもスーパーの袋など、ゴミを燃やすだけで、いとも簡単に出来てしまう。

最近注目されている環境ホルモン・・・外因性内分泌撹乱化学物質も、そのひとつがダイオキシンで、きわめて少量で人体に影響を与える。
環境ホルモンの一番の問題は、精子の奇形や減少を招き、「子供が生まれない」現象を引き起こしている。 日本の大学で学生を調べたところ、34人中1人だけが正常だったという事実からすると、あと数年すれば日本でも子供が出来ないという事態になる。

ダイオキシン・ビスフェノールA・メニルフェノール・トリブチルスズ・スチレン・モノマー、トリマー・・・

哺乳瓶にも使われているポリカーボネートは、落としても割れないし、加工ができる、軽い、デザインがいいなどの利便・経済優先でつくられているが、 洗うと傷が出来て、そこから溶け出たものが人体に入り、脳にも働く・・・このときに精子が出来なくなる(赤ちゃんの頃からすでに!)。
アメリカのシーア・コルボーン博士は、「環境ホルモンによって人類は滅亡する!」とまで豪語している。 アル・ゴア氏の言う「戦争で滅亡」でなく、環境ホルモンで滅亡する日がやってくる。

恐ろしいことに、ダイオキシンは体のどこからでも入ってくる。
一番多いのは魚で、河口付近の魚(魚食性、雑食性のスズキ・イシモチなど)は、ダイオキシンを有効に摂取できてしまう。
避けるのであれば、魚は一年物がよい(回遊性の魚で、秋刀魚など)。出世魚はダメ(食物連鎖)。
ウナギも多いが、好きだからいいことにしている!(と、船戸先生は笑いながらおっしゃる)
はるかに悪いのは、煙草で、煙草の煙のダイオキシンは濃厚。吸ってもいいが吐くな!(とも)
「不都合な真実」でも取り上げられている“地球の温暖化”だけでなく、複合汚染が問題である。


■遺伝仕組み換え食品の真実

虫の付かないジャガイモは、ある細菌の猛毒の遺伝子を組み込んだジャガイモ。 虫が食べて死ぬものを、なぜ人が食べて安全と言えるのか。
日本には入らないだろうと思っていたら、翌年入った。 そのときの○○大臣(聞き逃しました)は、「人間は虫よりでかい、だから大丈夫」と言ったそうだ。

■紫外線の恐ろしさ

紫外線には、A波・B波・C波があり、B波とC波は殺人光線。それをオゾン層が守ってくれていた。
日本人でも皮膚癌が増えてきているが、海外旅行で日光浴をしているのは日本人だけ。直射日光には、10分以上浴びない!

オゾン層の破壊・・・フロン1個が150万のオゾンを壊して酸素を作る。南極大陸にオゾンホールができて、どんどん大きくなっている。
フロンガスによるオゾン層の破壊は、紫外線Bを増加させ、皮膚ガン、白内障が増加している。

自動車の排気ガスも、地球温暖化だけでなく、気管支喘息やアレルギーの増加という形で、人体に影響を与えている。
その他に、食品添加物や電磁波と癌化の問題なども、環境因子。

人は、“天然”や“現地直送”の言葉に弱い。
イチゴのカキ氷に使われる「天然コチニール色素」は、南米のサボテンについているカイガラムシを潰したもので、 イチゴのカキ氷は虫を食べている・・・これは遺伝子に影響を与えるもの。
色素は何のために使われるのか・・・買い手の健康と売り手の利益。
売れなきゃ売らないんだから、買わない努力をする。


■環境問題とは原因? 結果?

利己主義・利便主義・拝金主義・刹那主義・・・幸せと快適の混同

健康から見た環境問題とは、健康を害する原因であっても、なぜ環境が悪化したかを考えた時に、 私たち人間の日常生活の結果でしかないということを思い出す必要がある。
そのうえで、なぜ環境を悪化させてしまったのかという根源的な原因を追求する必要がある。

食品添加物や遺伝子組み替え食品とは、私たちの健康を祈って作り出したものか。
ダイオキシンや環境ホルモンの元であるゴミとは、いったい何か。
フロンとは、NOx(窒素化合物)とは、SOx(硫黄酸化物)とは、酸性雨とは・・・・・
こうして考えていくと、安全性よりも利益を追求した経済至上主義という価値観。つまり「儲けたい」という「欲」。 それが便利、快適、流行という形に変わってしまうと判らなくなる。
経済は大切だが、それ以上に命が大切である。健全な精神・肉体があっての経済である。
ダイオキシンをつくるのも無くすのも我々である。なぜつくってしまうのか → 欲望
「フグ」より怖い「たい」の毒 → ああしたい、こうしたい、儲けたい、美味しいものを食べたい・・・

心・体・経済の順番を違えたり、現状を見極めないと、片棒(地球滅亡への)を担いでしまう。
大事なことは、事実を知ること。気が付いたら、勇気をもって実践すること。
まず自分に出来ることから始めよう。


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