特集 「本格的な炭窯で焼く」
特集 タイトル
(2003.2.1~2)


「炭焼に行かない?」という友人からの電話に
「面白そうね。行ってみようか!」と、二つ返事の私。
車で行きたいところだけれど、雪や道路の凍結が心配ゆえ、JR飯田線で行くことにしました。
豊川に勤務しているので、列車そのものは身近だけれども、20代の頃に乗ったのが最後の飯田線。懐かしいー。
豊川駅から1時間半余り、水窪町にあるトンネルとトンネルの間の大嵐駅(無人)は、東京駅をモチーフにしたそうです。
特急伊那路1号は、普段通過する大嵐(おおぞれ)駅に、セミナー参加者のために停車するんですって!



その夜、肌シャツ、タートルのカットソー、厚手のセーター、首にマフラーを巻いて、タイツにスパッツ、ソックスに「貼るカイロ」をくっつけ、ズボン2枚を着て寝たのに、それでも寒くて早朝に目が覚めたのです。

「さむぅいよー、夏だったらいい所なんだよね、きっと・・・」



昼食の準備ができるまで、インテリアウォッチング。
吹き抜け空間の建築化照明を見ながら、住宅でも使えるだろうかと、ついつい職業意識が働きます。富山村の木で造ったのでしょうか、ふんだんに使われた木造建築に安らぎを感じていいもんですね。 家具も富山村の・・・と思いきや、Oliverの商標がついていました。
昼食は、カレーとスープにスパゲティサラダ
それにバナナでボリュームたっぷり。

大嵐駅からは、スクールバスに揺られ「ふるさと とみやまバンガロー村」に到着。 取り合えず荷物をバンガローに置きに行きましたが、数日前の雪が残り、シンシンと冷えます。
一泊二日のセミナーですから、寒さ対策だけはぬかりなくダルマのように着込むつもりですが、そばを流れる川の音に不安を隠せない私。



「みんなの森大学」は、富山村の教育委員会が主催していて、炭焼きセミナーは今年で三回目とのこと。
知事選と重なったこともあってか、受講者15名参加の予定だったのが、5名だけの開校式が行われました。
教育委員長の挨拶と、インストラクターの中村勝之さん、炭焼き名人の田辺光守さんの紹介があり、事務局5名と食事担当2名の総勢9名が、二日間お世話をしてくださるスタッフです。












窯の内部の高さは110cm~120cmなので、その長さに原木を切り揃え窯詰めていく。 焼き上がった炭が窯の壁に向って倒れることが理想的で、そのように詰めるのは長年の経験と様々な工夫があるなど、 炭焼きの手順とポイントを解説していただきました。



いきなり、鹿の写真で「何ぞや?」と思われたでしょうね。
これは『森遊館』に展示されていた剥製ですが、富山村には鹿やイノシシなどの野生動物が生息していて、この夜は、鹿の肉料理をいただいたのです。 刺身は馬肉のような食感で、大根と炊き合わせた鹿肉の美味しかったこと!

村の交流の場でもある『森遊館』に移動し、山村留学の生徒たちと合流して、炭焼きの作業の手順等の講習を受けました。 講師はインストラクターの中村さんです。












さぁて、いよいよ実習です。
すでに切ってある原木を、道路を挟んで建っている炭焼窯まで運びます。曲っているものは隙間が出来てしまうので、なるべく真直ぐなものを運び、枝はナタや鋸ではらいます。
原木は太い方を上にして立てるのだそうで
上の方にも隙間のないように、びっしりと短いものを詰めていきます。







山村留学の元気な子供たちや、指導員の若者たちもいたから、原木の窯詰は順調に進み、 入口に石を積んで、練った赤土を隙間に詰め、いよいよ火入れが行われました。 生木の原木がゆっくり乾燥され、原木に火がつくまでは、窯に詰めたくらいの量の木を燃やすのだそうです。
火の勢いを絶やさぬよう、スタッフが頃合を見計っては、マキを継足しに行かれました。














夜はスタッフと一緒に食事をいただきながらの懇親会。
ダルマストーブで暖をとりながら、富山の話に耳を傾けました。
みんさんもご存知のように、富山村はかつて“日本で一番小さな村”と言われ、現在は人口202人の、青島に継いで2番目に小さな村。
佐久間ダムができる前までは、炭窯から見える州のところが街だったとか。
昭和29年に佐久間ダムが出来て、富山村を出た人たちは、豊川、宝飯郡、渥美、そしてなんと豊橋(我家の近く!)に移住したんだそうです。
『みんなの森大学』を運営している役場の一人の田中さんとは、愛猫の話で盛り上がってしまいました。
猫の話なら引けを取らないつもりでいた私ですが、とても敵わない。
表現力豊な田中さんの話に、つい引き込まれて大笑い。











今回、私たちはそれを見届けることを出来ませんでしたが、 これほどに手間をかけて出来上る炭に、敬意を持って向きあわねばと思いました。

苔むした老桜に「いい景色ねー、持って帰れるものなら・・・」とは友人と私。今回の木種は、地滑りで流れた樹木を利用したのだそうです。
炭に適した木種はいくつかあり、下の写真は左から桜(これは適していない)、楢、?(解らないそうです)
ギョウブ(リョウブとも)、樫、シデ。

二日目の朝、窯の隙間を詰めた赤土が、いい色に煤けていました。
火の勢いを見ている名人・田辺光守さん。

窯口の上方から蛇の舌のように火が出てきたら、木種に火がついた証拠。 煙の色と匂い、窯の中の生木の水分が抜け、火が点いたことを判断するのだそうで、 全ての原木に火が回ったとき
小さな通気口だけを残して窯口を塞ぐ。
原木は焼く2日間くらいで炭になり、炭化が進むと
白い煙から青い煙に変るとか。







インストラクター・中村さんの奥様から、初日は手作りのウイロウとぜんざい、二日目は蓬餅の嬉しい差し入れがありました。 昨夜の鹿肉の残りをバーベキュー。
「窯の火で、サツマイモやジャガイモを焼いたらいいねぇ」 と、食いしん坊の私たちは、食の話題にこと欠きません。
みんなで記念撮影、「はい、チーズ!」


煙たなびく炭窯に、後ろ髪引かれながら帰路につく

2週間後に、出来上った炭をとりに行きます。とっても楽しみ!