「ガンと闘う医師の ゲルソン療法」
星野仁彦著  マキノ出版 ¥1,600+税

ガンは三大生活習慣病一つとされ、60歳以上まで長生きすれば、誰でもガンになる可能性は大きいし、 高齢化がさらに進めば国民の2人に1人がガンにかかっても不思議ではないとまで言われています。 ということは、誰もが因子を持っている可能性有り、ということなんですね。
ガンの原因はわかっているだけでも、老化や遺伝、そして環境と密接に関係していますが、 食生活が及ぼす影響(良くも悪くも)も忘れてはなりません。
今回は、ご自分もガンに侵され、克服していく中で「ゲルソン療法」にたどり着いて試みた精神科医・星野仁彦氏の著書を紹介します。

ゲルソン療法とは、ドイツの医師マックス・ゲルソンが1930年代に開発した治療法で、 ガンを全身の栄養障害、代謝障害ととらえ、特殊な栄養療法や食事療法で治療する方法です。
ゲルソンの言葉に、『医学界は腫瘍のみがガンだと錯覚している。これが最大の間違いで、ガンの腫瘍はガンの症状の 1つであってもガンの全てではない。ガンとは、ガン細胞や腫瘍を生み出すような体全体の栄養代謝の乱れなのだ。 そして、ガンとはすべての病気の中で最もひどく栄養代謝の乱れた病気である。腫瘍に目を向けるのではなく、からだ全体の栄養代謝を正せばそれでガンは治る』 とありますが、なんと心強い言葉。決してガンに屈することはないのですよ。


著者・星野仁彦氏は、平成2年の秋に大腸のS状結腸に直径4pの大腸ガンが見つかって開腹手術を受けましたが、大腸の一番外側の壁(漿膜)まで破れていて、局所のリンパ節にも2ヵ所転移していたそうです。 手術は順調に終えましたが、再発の危険性はそうとう高いということで抗がん剤を使用したそうです。が、驚いたことにガンの種類によっては、延命効果が多少期待できる程度で、抗がん剤が効かないのだそうです。
その後、予想外に早く肝臓にガンが転移。この時のショックは大きく、精神科医でありながら絶望して落ち込んで夜眠れなくなり、うつ状態に陥りながらも、 この難局を乗り切ろうと出会ったのが、ゲルソン療法です。星野医師はゲルソン療法を厳格に実践して再発を予防することができ、平成12年の秋で満10年になり、現在も異常なく経過しているそうです。

多くのガン患者がゲルソン療法に着眼したものの、ゲルソン療法原法の厳格さや内容の厚さに圧倒されて、すばらしい療法だと分りながらもあきらめてしまうケースもあり、 ゲルソン療法の原則を守りながら、ゲルソン療法には無いものも取り入れて星野式の“簡略版ゲルソン療法”を考案されました。

“簡略版ゲルソン療法の五つの基本”

1.無塩食

塩分そのものは人間の体に不可欠のものでなく、塩分の摂りすぎはガンを増殖させる。(この辺りのメカニズムが詳しく書かれています)和食の味噌・しょうゆの食生活ではかなり制限されるわけですが、最低2〜3年は厳密に守る。

2.油脂類と動物性蛋白質の制限

オメガ3系列に属する多価飽和脂肪酸(リノール酸、アルファリノレン酸)の亜麻仁油(必ず生で摂る)・バージンオリーブオイル(炒め物に)・シソ油・エゴマ油はガンを抑制し、 動物性脂肪の価飽和脂肪酸とオメガ6系列(ポピュラーなリノール酸、アラキドン酸)に属するものはガンを促進する。(生で摂った場合)

3.人参ジュースなど、大量の野菜・果物ジュースの大量摂取

野菜ジュースは抗がん剤の代り。ただし、無農薬・有機栽培の新鮮なものを。

4.アルコール、カフェイン、タバコ、精製された砂糖・人口的食品添加物などの禁止

5.イモ類、未精白の穀類(玄米・胚芽米・全粒粉)などの炭水化物、豆類、新鮮な野菜と果物(国産)、海藻類を中心とした食事

上記の基本に、ビタミン類の大量摂取やカリウムやヨードの補給、スギナ、ヨモギなどの薬草茶と尿療法 などを併せたのが、星野式で、 ゲルソン療法は、“炭水化物と高ビタミン、高ミネラル中心の食事”ということに尽きるそうです。
「なぜゲルソン療法がガンに有効なのか」の科学的な根拠について噛んで含めるように記され、日本では立遅れている『ホリスティック医学』(心と体の両面から総合的にアプローチする治療)についてもふれらています。

こうしたゲルソン療法でガンを克服した12人の体験談を読むと、本人はもとより、家族や周囲の「治したい」という強い愛情が“ゲルソン療法”へと突き動かし、取り組んだ経過に深い感動を覚えたのと同時に、 「ガンは治る!」という安堵にも似た希望と、周りの人に言わずにはおれない衝動に駆られました。

テレビ番組で「ガンを抑制する食べ物シリーズ」を放映すると、その日のスーパーでは、その食品が陳列棚から消えてしまうという“日本型ウィルス症候群”が、“新型肺炎SARS”並みに伝染しますが、 ガンと食生活の根本的な話(たとえばガンを作る食べ物もきちんと知る)を分りやすく学習する番組があったら、体の中に潜むガン因子を育てることもないのだろうと思います。 ただ、“売れる”ことはしても、“売れなくなる“ことはしないのが、今の消費社会の構造でしょうか。


将来型ガン因子を持ってるかもしれないつもりで、私は出来るところから食生活を変えてみました。 まずはパン食をやめて、雑穀入りの胚芽米に野菜(無農薬・有機野菜を通販でと検討中)・イモ類・豆類・海草類が食材で、動物性蛋白質は、お弁当に卵を焼くのと、お味噌汁のダシ用にいりこの粉末を使うくらいで、お肉はカット。 油はオリーブオイルとシソ油を。塩と砂糖はミネラル分の多いものを置いてますが、それも使っていません。ただ、塩分を完全にカットは難しいので、減塩しょうゆや友人の手作り味噌を使っています。 それと、ちょっと甘いものが欲しい時のために、ミネラルの豊富な黒砂糖を用意しています。一度に全てを変えるのは難しいけれど、少しづつゆっくりやってみようと思います。



さぁて、いかがでしたか?
将来型ガン因子を持ってるかもしれないあなた、今闘ってるあなた、ぜひご一読を!
これは一家の家庭医学書として、お奨めの一冊です。

CONTENTS  BACK