TALK-TALK タイトル
「一日カフェの山寿荘」(2009.11.6)


「今日の予定は?」と、友人から電話です。
「図書館で予約の本を借りたあと、息子のアパートへ行って・・・なんだった?」
「空いてたら、美合の“一日カフェ”にどう?」
そうだ、先日の『花と器・野むら』でお会いしたEさんから、そのDMをいただいてたのに、すっかり忘れてたのを思い出し、「行くね」と返事。
それぞれの用を済ませ、お昼近くに合流して、友人の車で行ってきました。

場所は、9年ほど前に訪れたことのある、岡崎・美合の「さんじゅ荘」。
インテリアプランナー協会主催「JIPA 2000 IN 名古屋」のテーマ別討論会で山本寿仁さんとお会いしたのが縁で、 当時所属していたインテリアコーディネータークラブで“土塗りと 手打ち蕎麦”を企画し、 参加者を募っておじゃました「さんじゅ荘」でした。

森の中の、隠れ家的な「さんじゅ荘」は、県道から入った、途中擦れ違い不可でもって、その先行き止まり一本道なので、 「もし対向車が来たら、若い方がバックよね」と、誰にとも無く宣言し、左手の池に「わたし泳げないからね」とドキドキしながら進んで、 運良く対向車に出会うことなくたどり着いて、ほっ。
2箇所あった駐車場で、斜面を上がる「若者用」の看板に、すかさず 「じゃぁ、こっちだね」と言う友人を制し、無難な平地に駐車してもらって到着。
プレハブの内外を土で覆い、古材梁を渡した土蔵風の建物では、すでに多くの先客が寛いで、食事やティタイムを楽しんでいました。

メニューは、特性カレー(カヌーのような器に、サラダとカレーとライスがたっぷり)、鴨と秋野菜の米麺、ケーキ三種に珈琲と紅茶で、 私たちが注文した、鴨と秋野菜の米麺の美味しさは、絶品でした。

Eさんのご配慮で、多忙な山本寿仁さんが、いらしてくださいました。
9年ぶりの再会に、「(山寿荘が)いいですねぇ、すてきになりましたねぇ」とご挨拶すると、 笑いながら 「ボクがですか」・・・(友人に通ずるものがあると思った!)
「え? あははぁ、建物ですぅ」なんて、ぶち壊しながら、案内していただいた、お蔵風の実験棟で、お話を伺いました。

「蔵探訪シリーズ・蔵のある風景」というタイトルで、岡崎市内のいろんな蔵を紹介し、まとめた「百蔵」の著者でもある 山本寿仁さんは、家業の山共建設と大学講師の傍ら、 「土」やエコ環境など、いろんなプロジェクトに携わっておられます。

7坪ほどの実験棟は、内外に小舞を施した大壁工法で土壁の間を空洞にした、「断熱材の無い断熱」の実験をしているそうです。

お蔵に施された家紋のこと、左官の粋な仕事技の戸箱の文様が、ほとんど残っていないことへの無念さ、 日本古来の軸組工法と屋根瓦に使われた土の量のバランスが強度を増し、束を受ける石が、地震の揺れを免震していたこと、 自然素材仕上げでも、呼吸できない建材で覆いながら、「自然」と謳う矛盾について、 また、友人の 「地元の土でも塗れるのですか?」との問いに、「粘土質の土ならば左官材として使える」そうで、 私たちでも分かる言葉で、「土」を通しての思いなどを語っていただき、二人では勿体無いような、思いがけないセミナーでした。

塀のように並んだ、畳一枚ほどの土壁の色見本や、収縮による割れ壁や仕上法のテクスチャー、土に小石と藁を混ぜた外壁の洗い出しなど、 土が持つ力と表現の可能性を試しながら、実物大のサンプルとしての実験棟は、打ち合わせの場としても使われていくそうですので、 興味のある方は、アクセスされてはいかがでしょう。