TALK-TALK タイトル

花攫い
(2004.8.1)


この奥にしつらえたのに・・・
(Photo by kuroya)

担当した店舗・鮨屋さんのオープン当日、お祝いの洋鉢を隠す為に、和紙でくるむ最後の仕上げにと、店に赴きました。
和紙でくるむ作業は程なく終ったのですが、アレンジ花が次から次へと届けられ、花屋さんにも負けないくらいの多さに、馴染み客の層の厚さが伺え、感心していたら、 オープン直前の準備に余念の無い女将さんから、「お花の置き場所を決めてさーい」と頼まれ、 「観葉植物はこの辺、欄はこっちとあっち、センスのいいアレンジはこことここ・・・」と、花を持って右往左往。
すてきなアレンジを届けた方に、「すてきねぇ、どこの花屋さんですかぁ? 今審査してるんですよぉ」、なんて冗談を言いながら、楽しませてもらいました。

オープン20分前に作業を終えて外に出ると、驚いたことに、“花攫(さら)い”が、早くも開店祝いの花を片っ端から抜き取っていたのです。
そういえば、一時間も前だというのに、開店を待つ初老のグループが居たので、「熱心なお客さんたちだなぁ」と感心していたその人たちが、実は花を攫うために、早くから待っていたのです。
真先に百合や欄の抜き取り合戦。抱えきれないほどの束を、車の荷台に載せている人もいます。茎から取れてしまった百合や花びら(乱暴に抜くものですから)には目もくれず、“取らなきゃ損、損”と、えげつないほどに、かっ攫(さら)う、開店風物詩。

夕方、打合せを終えて事務所に戻ると、店舗の担当者から、「会社の祝い花も抜き取られましたんで、何とかつくろってくださいと、女将さんが言ってました」との報告に、“花攫い”もそこまで傍若無人なのかと、唖然。

会社からの祝い花は外に出さず、店舗入口脇へ、“オブジェ”のように設えてもらいました。オープンに訪れるお客さんに楽しんでいただこうと、かなり奮発した花あしらいで、 それが開店するやいなや、葉と枝モノだけ残して、消えてしまったんだそうです。“花攫い”と共に!
取り急ぎ、店舗まで飛んでいって、撮影に使ったドウダンツツジの束を、抜けたところに挿してきましたが、 いっぺんあのオジサン(一人いたのです)オバサンたちを集めて、こっぴどく! 説教してやりたいものですわ。