「日本有機農業研究会全国大会」(2007.3.10) 

基調講演 「どうする日本の食と農・・・生命科学の進歩と農業」 P1

講師:河田昌東氏
(四日市大学 生命科学・遺伝子組み換え情報室)

遺伝子組換え作物の現状

土の中にいるバクテリアから遺伝子を取った。
そのたった一匹のバクテリアが、遺伝子組み換えの元になった。

2005年に世界で栽培された遺伝子組替え作物(以下、GM作物)は、日本の全面積の2.5倍に当たる9000万ヘクタールが栽培された。

そのうち、アメリカ55 %、アルゼンチン19 %、カナダ6 %、ブラジル10 %、 中国4 %、その他6 %だが、アルゼンチンは米国企業の栽培なので、 事実上世界の約74%はアメリカである。

種類としては、大豆60 %・トウモロコシ24 %・綿11 %・菜種5
性質別では除草剤耐性71 %、害虫抵抗性18 %、この両方を併せ持つもの11

大規模栽培のための省力化をめざしたものを第一世代GM作物。
多くは家畜飼料や食用油など加工品のために利用されているが、バイオディーゼル油やアルコールなどの、 バイオ燃料としての利用が広がると予想されている。


遺伝子組換えがもたらしたもの GM汚染

「世界の人口増に対応して食糧生産を増やし、農薬を減らして環境を守る」というキャッチフレーズで登場した遺伝子組換え農業だが、 除草剤対応性大豆やナタネの収量は落ち、害虫抵抗トウモロコシの収量も変わらなかった。

省力化にはなったが、利益を得たのは大規模農家のみ。
省力化と引き換えに、農家はGM作物の種子に高額な特許料を払い、除草剤耐性作物と除草剤をセットで買わなければならなかった。
組み換えの方が、農薬が増えている。環境に優しいはずだったのに。


もっと怖いのは、花粉を飛ばして、同じ種に交配してしまうこと。
菜種やトウモロコシ等は、飛んできた花粉で、意図しない交配によるGM汚染をもたらした。

カナダから輸入されるGMナタネが、鹿島港や四日市港、博多港などの輸入港周辺に、こぼれ落ちによる自生が起こり、 国内での世代交代や多年草化によって、国内の作物への組換え遺伝子伝播の危機が迫っている。 三重県、愛知県は高い。
(写真は、国道23号線沿い線路脇の菜種)

害虫抵抗性トウモロコシの花粉が飛散し、周辺の雑草を食用とするオオカバマダラなどの蝶類の幼虫を殺すという、標的外昆虫への影響も明らかになった。
また、特殊なカビが大発生し、土壌生態系にも影響を与えている。


安全性は確保されたか?

作物が本来持っていない遺伝子の壁を越えて侵入したGM作物は、 「実質的同等性」というすり替えの論理で安全審査はきわめて安易に行われてきた。

安全性については、大腸菌に入れて確認しているだけで、遺伝子がつくった蛋白は、まだ確認されていない。
ネズミの母さんに食べさせ、その子供の死亡率は
大豆 6.8 % ・ 遺伝子組み換え 55.6 % ・ 非組み換え 9

脳以外は、臓器がみんな小さかった。
アレルギーなどの危険もコンピューター検索にとどまり、生体実験が行われない。
動物実験も短期間(約一ヶ月)で、急性毒性だけが対象になり、慢性毒性や次世代毒性は無視されている。
次の世代までの実験をやってないのは珍しい。次世代までの安全性は?

人間にとって、腸内細菌が抗生物質耐性(抗生物質が効かなくなる)危険性をはらむが、必要悪として許されている。 人間に食べさせるのは人体実験である。

残留農薬の問題・・・日本は、アメリカから大豆を輸入できないので、「基準を 20ppm まで上げて欲しい」と、アメリカから要請があった。(日本は6ppm)
政治的な圧力が、国際的な関係まで支配してしまう。

アメリカの市場で売られている食肉が、抗生物質耐性菌で汚染しているというのは、今や常識。
にも関わらず、国内の輸入されている食肉や国産の食肉の検査は行われていない。
我々は本当に安全なものを食べているのか。アメリカの牛肉は、くれぐれもレアで食べないように。

このように、GM作物は安全性よりも、まず生産し流通させる、というアグリビジネスとアメリカの農業政策に支配されている。

アグリビジネス
種苗、種畜、飼料、肥料、薬品、農業用施設・装置などの農業用資材のほか、農産物や食品の貯蔵、 加工、流通など幅広い分野が含まれる。
最近では、ITやバイオテクノロジーによる高付加価値農業と地域発展に関連して、「アグリビジネス」が使用されることが多い。
日本では、機械技術研究開発とその実用化・産業化のための産学官の連携による取り組みを促進するため、 2004年10月には、農林水産省により「第1回アグリビジネス創出フェア」も開催されている。
地球環境問題の中でも、特に生物多様性や森林の分野においては、途上国でグローバル企業などが進めるアグリビジネスによるモノカルチャーや、 遺伝子組み換え生物・食品(LMO/GMO)がおよぼす地域固有の生物や、地域社会経済への影響などが懸念されている。


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