〜約280年前の代表的な沖縄の農家・中村家住宅〜  

18世紀中頃に建てられたという中村家住宅は、士族屋敷形式に高倉、納屋、畜舎等の農家形式が付随して、沖縄の住居建築の全てを備え持っている建物とのこと。
沖縄本島では屋敷構えがそっくり残っている例はきわめて珍しく、当時の上層農家の生活を知る上にも、貴重な遺構であるということで、 昭和31年に琉球政府から、昭和47年に日本政府によって国の重要文化財に指定されたそうです。

正面の塀は、ヒンプン(顔隠し塀)と言い、外から直接母屋が見通せないようにした目隠しの造りで籾、琉球石灰岩の石垣の風化が、長い歴史を物語っているかのようでした。


正面のウヤフ(母屋)と右手のアシャギ(離れ座敷)がL型に並び、左手の高倉(籾倉)と合わせてコの字型にも見える配置になっていて、 守り神のシーサーが、屋根の上にも庭にも鎮座しています。 アシャギ(離れ座敷)は、首里王府の役人が地方巡視に来た時、宿泊所として使用したそうで、手入れの行届いた中庭が、座敷と母屋から望める造りです。
 ウヤフ(母屋)
トゥングワ(台所) 

トゥングワ(台所)の天井部分が低くなっているのは、屋根裏部分を物置(薪や食料)として使われていたためとか。
薄明りの中で美しく輝く道具たちが、当時の暮しを静かに語っていました。

高倉(籾倉) 
フール(豚小屋) 

 井戸
高倉(籾倉)は、住居と同じ角柱を用い、壁、床とも板貼りが特徴。屋根裏の傾斜は、別名「ネズミ返し」といって、ネズミが穀倉に入れないよう工夫されたものとか。 丁寧な暮しを感じさせる、簡素で機能美を備えた高倉といい、井戸の造形美といい、ふと、琉球王朝時代にタイムスリップすることが出来たらなぁと、思いを馳せました。