『四季体感・三河生物探検隊』は早くも中盤を迎え、いつも楽しく受講義していますが
この日の講師・大平司先生も、実に活き活きとユーモアたっぷりの熱弁を奮われました。
ことナメグジウオの話に及ぶと、さらに高潮し
講座というよりは一人芝居を観劇させてもらってるような楽しさ!
受講者だけではなく、もっともっと多くの人にも聞かせてあげたいと思いました。
一語一句を再現できなくて、とっても残念ですが、三河湾の様子をどうぞ。



第7回 三河湾の生物 (2003.7.9)  講師:大平 司氏


三河湾ってどんなところ?

国定公園にも指定されている三河湾は、平均深さが9.2mで、知多半島と渥美半島に囲まれていて、佐久島から北西を知多湾(衣浦湾とも)といい、境川、矢作川、矢作古川が流れ込んで、師崎から伊勢湾に流れやすいので、水質も浄化されやすいとのこと。 一方、渥美半島は、段戸山を水源としている豊川と江川、豊川方水路が流れ込むが、水量が少ない上に、ぐっと西に伸びて湾口を塞いでいる閉鎖性海域なので、汚れやすいのだそうです。

三河湾の海岸線改変状況と自然海岸の減少

自然海岸(工作物がない) ・・・25.3%(全国平均42.9%)
半自然海岸(潮干帯・・・満潮・干潮ラインには工作物がない)・・・15.0%(全国平均15.1%)
人口海岸 ・・・58.4%(全国平均40.8%)
河口部  ・・・1.3%(全国平均1.2%)

開発以前の三河湾は、“白砂青松”で浅瀬海岸が多く、各地の干潟、浅場は稚魚たちの楽園だったが、高度経済成長にともない、国土開発、埋立てなどの都市開発と台風などの災害とで自然海岸が激減し、自然海岸はわずかに吉良に残っているくらいとのこと。
私が小学生だった頃、夏休みになると蒲郡の大塚海岸へ海水浴に連れて行ってもらったし、ちょっと先の星越海岸でもアサリ取りをしたけれど、今はマリーナやラグーナが取って代りました。

水質の変化

アサリは海水の掃除やさん。3センチくらいのアサリ1つが、なんと1時間に1リットルの海水を浄化するそうです。干潟の生物も海水を浄化します。
ところが、自然海岸の減少でアサリが少なくなった(稚貝まで乱獲されてしまうから、さらに減少)のと干潟(浅場)も一色干潟、塩川干潟が残っているくらいで、 生活様式の変化に伴って、工場排水や洗剤、農薬などから多量の有機物が流れ込み、河川本来の持つ自然浄化能力が減少して透明度が低下し、水質が悪化しているそうです。

赤潮(red tide)・苦潮の発生

窒素・リンなどの有機物が太陽の光を受けて光合成し、植物プランクトンが異常に増えて、特定のプランクトンが赤くなる現象で、埋立てとの関連性もあるそうです。 また、苦潮(青潮)というのもあり、プランクトンの死骸をバクテリアが分解(酸素を使う)して貧酸素水になり、魚介類が被害を受け、海苔の養殖にも影響を及ぼすとのこと。
竹島あたりでは、水質汚染の指標でもあるアサオの発生が問題になっていたが、毎年多額の費用を投じ処理対策をしているそうで、 昨年回収できた量だけでも、4tダンプで400台分を超えたとのこと。 三河湾浄化とアオサ処理に関する循環型システムに取り組み、三河湾環境チャレンジプロジェクトを実施しているそうです。

湾内の海岸生物について

蒲郡大塚海岸(磯浜)は、湾内でも最も小規模な転石磯で、地域的にみて非常に栄養に富み、再三赤潮の被害を受けやすい。死貝、貝殻が多く夏から秋にかけてのアオサの繁殖も目につく地域。

優占生物・・・1.イソゴカイ  2.イシゲ  3.ホンヤドカリ

三河大島のナメクジウオについて

「6月3日の新聞に“珍しいナメクジウオ採取”という記事が載りました。見つけたのは、小学校6年川口恭央君で、新聞に載るということは、それほど珍しい・・・ということです。 ビーチランドなどによると、ナメクジウオは1995年に南知多町日間賀島沖で1匹が採取された以降、両湾内では見つかっていません。関係者は「台風の高波で湾内にいたのが打ち上げられたのではないか」と推測しています」

と言う大平先生のテンションが上がり、「出会った瞬間・・・それは昭和9年7月25日のこと」と、始りました。
竹内金六氏が 三河大島での臨海実習にてナメクジウオの生息を発見。「俺の研究室にナメクジウオがおるので見に来い」と言われたとか。
ナメクジウオは脊索という進化の途中の形質を残している貴重な動物で、約5cmくらいの紡錘形でシラウオに似ている。目・耳・鼻はないが、光にはとても敏感に感じ、動きが敏しょう。口の部分には繊毛を動かしてケイソウ等のプランクトンを食べるとのこと。 昭和天皇も関心を持っておられ、蒲郡に見えた際、ナメクジウオを献上したそうです。
右下の標本は、大平先生が採取したものです。採取の仕方は、浅瀬でスコップにすくった砂を戸板に乗せ、目を皿のようにしてナメクジウオが跳ねるのを待つのだそうです。

   

昭和16年3月27日に、広島県の有竜島と三河湾の大島(北限)で、国の天然記念物地域に指定されたが、昭和31年頃から生息が確認できにくくなったそうで、 昭和42年から43年にかけて緊急調査をしたが、結局見つからなかったとか。
きれいな粗細砂地に生息する動物だけに、湾内の浄化が進めば、再来の期待も出来ると、関係者は息長く見守っているそうで、 「私もこの先ずーっと調査を続けたい、命のある限り!」と締めくくられた大平先生に、聴講生は大喝采。


第6回 指標生物の調査(2003.6.22) 

第5回 地球温暖化指標生物を探る(2003.6.11)

第4回 新緑の里山(2003.5.14)

第3回 山 の 植 物 (2003.5.14)

第2回 春の里山を歩く (2003.4.26)

第1回 植物の不思議  (2003.4.16)

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