TALK-TALK タイトル

INAX名古屋ショールームにて『建築金物展』開催に伴い、建築家・中村好文(なかむらよしふみ)氏を迎えての記念講演会が催されました。
尊敬する中村好文氏とあっては、何をおいても駆けつけねば!の私、友人と一緒に行ってきました。
少し早めに着き、受付が始ると同時に会場に入って最前列の中央、つまり講師のまん前の席を確保。(なんだかライブみたい・・・) でも、ファンなのだから遠慮してはいけませんものね。
『住宅巡礼』を読んだり雑誌等のお写真で、中村好文さんのイメージを膨らませていましたが、お会いしてみると華奢でシャイなお方。 しかし、ひとたび話しだすと、本を読んで感じたお人柄そのもの。ユーモアたっぷりの話術に和やかで楽しい講演会でした。 その様子を少しでも伝えられたらと思います。


  建築金物から学ぶこと

2002年10月8日
INAX 名古屋ショールーム

会場の椅子の上に、好文さん(馴れ馴れしいけれど、コーブンさんと呼ばせてもらいます)手書のレジメらしきものが置いてありました。

「みなさんに何もあげるものがないから・・・蝶番の絵のところを折って輪のところを切ると本になります」

と、好文さんから嬉しいプレゼント! (一部のイラストをスキャンして使わせていただきました)

「どんなときにも旅をしたい、たとえば帰国して成田に着いたばかりでも、「どこそこの国へ行かないか」と言われたら、そのまま行けるほどに旅が大好き、とおっしゃる好文さん。 旅は現実逃避であったりもするが、旅そのものが目的であり、建築を見る面白さや見てきたもの感じたものが財産となっている。」
学生時代から好きだった建築をきちんと見ておきたいと思い、数え上げたら30ほどあったが、そのうちの27ほどに絞り、コンフォルト『住宅巡礼』に連載。新潮社から単行本として出版され、今日(10/8)続編が出るとのことです。
(コンフォルトも『住宅巡礼』も我家の本棚にあり、“あの世”に持っていきたい一冊でしたが、続編が出たとあっては二冊持っていかねばね)

「アメリカ・メキシコから帰国して時差ぼけがひどく、一ヶ月たちやっと時差の方は治ったが、ボケが残っています」

『住宅巡礼』の中でもユーモアたっぷりで、笑いこけながら読んだものでしたが、ヒーリングジョークが時折襲います。

「コンフォルトの連載が終ってやれやれと思ってるところへ、芸術新潮から建築と旅をテーマにした連載の依頼があり、『意中の建築』というタイトルで今年4月から始ったとのことです。
「石の塀」や「第3の男」に出てくるウィーンの地下室、フィンランドの森の礼拝堂、ストックフォルムの市立図書館、森の斎場などのランドスケープがすばらしく、建築の幅を過大解釈して、記事を書いていきたい。
旅先で、そこの風俗や習慣の違いが建物に現れ、たとえばヨーロッパは内開きのドアが多く、雨の多い日本とは違うし、メキシコ人は昼寝をする習慣“シェスタ”があるから、視線を遮って風を通すガラリ戸が必要といったふうに、 人の暮しや住い方を見たり感じたりすることが面白く、有名な建築や歴史的な建築は、「ま、見てやるか」だが、無名の建築や建築の幅を広げて、犬小屋でも見てると面白い。」

「イギリス人は雨が降ってもあまり傘をささないんですよね。撥水性があるのかなぁ」・・・
撥水性 ?! アハハァー、こういう発想が楽しい!

「“人ってどうやって暮すんだろう?”のとっかかりとして考えると、きっと鍵や建築金物に表れるのではないかと思う。気候性・安全性・操作性・人の動作性とそこに表れるデザインごころ、人間の意匠心が見て取れ、なんとも面白い」
と語る好文さん。 この後スライドを用いるために席を移動し、なんと私の横の空席へお座りになりました。ほぼ満席だったから隣が空いてなかったらいずこへ・・・なーんて考えながら幸運を素直に喜ぶ私。

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