住いのような事務所

漆喰に杉板の外壁と木製のサッシが、日々の暮しぶりを伺わせる家のようであり、 足げく通いたくなるカフェのようでもあり、「ここが事務所なの!?」というのが、私の第一印象でした。
木製のドアを開けるや、社長のTさんの明るい声と笑顔に迎えられ、お抹茶と美味しい和菓子のおもてなしにも感激! 取材能力も無いのに好奇心だけで押しかけた私でしたが、大らかなTさんの人柄ゆえに、つい話に夢中になり、長い時間を過させてもらいました。

築50年のこの事務所は、移転した白竹建設の事務所を5年程前に改装したそうです。 杢目の腰板は中国の構造用合板で、青目があるからと除いておいたものを使ってみたら、いい雰囲気になったとのこと。
天井を剥して梁を出したり、応接室の床には在庫のカリンを使ったりで、工夫と手間と想いを込めた改装の面白さが目に浮かんできます。

割れ壁に重ね塗りを施した土壁が気になる私、「ご自分たちで塗ったのですか?」と伺うと、「師匠がいるんでよす」と。
師匠とは、私もMICC(三河インテリアコーディネータークラブ)のセミナーで講師にお招きしたことのある、岡崎の山本寿仁氏。 その師匠のもとで、左官さんに施工してもらったのだそうです。

フローリングの床に腰板と土の割れ壁、古い箪笥と古材で造ったテーブルと椅子、時代ものの瓶や階段箪笥の設え、お香のかおりに包まれた心地よい空間に、 「いいですねぇ」を連発の私。穏かな気分で仕事が出来そうですし、このまま住いとして暮してみたくなるような事務所でした。
古材と古材家具、再生家具、OMソーラーハウス、民家構法、民家再生、白竹ギャラリーなど、幅広い取組みをされている白竹木材さんの“住いづくり”へのこだわりをうかがいました。
民家構造のもつ素晴らしさにふれるにつけ、昔の民家に還ること、見直す価値、伝統の継承といったことも含め、一歩でも踏みだしたい。民家再生にも取り組みたい。
と、熱く語られるTさんの言葉に、私も強く頷きながら、確かな家造りを実践している建築家がいることに、頼もしく、そして嬉しく思いました。


若い社員の相棒にと“求人募集”をしたお話が、これまた感動的です。
家具職人の求人募集をしたところ、地元では応募が無かったのに、全国ネットで募集すると多数の応募者があり、面接をしてみると素晴らしい人材ばかりだったとか。 随分迷った末、本当は一人しか採用できないところを、ご自分の身を削ってもと、岡山と大阪からの二人の採用を決めたそうです。
採用を決めた後にも東京の学生から応募があり、会ってみるとこれまた素晴らしい人材なので、とても悩んでいるところだとお話されていました。 その時に面接したひとりの学生からのメールに、感動してしまったとも。そして、悩んだ末に東京の二人にも採用通知を出されたそうです。
そのお話を聞きいて、私まで胸が熱くなりました。白竹ギャラリーに感じるものがあって飛び込んでくる若者たちに、新しい時代を切り開いていく力を感じ、これからの変貌が楽しみになりました。

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