裏手に流れる川への高低差を生かた建物は、アプローチからギャラリー、中庭を眺めながら住居へと、回廊のようにブリッジで繋がっていて、 下階は藍染めの工房、上階は住居。居間から和室へはスキップフロアになっていて、今回はこちらもギャラリーとして使われていました。
照明は、光をどう放つかという視点で、レセップ(マックスレイので、この手法は私も大好きです)とスポットが使われ、器具の存在を主張せずに、美しい陰影を創り出しています。
日頃、工業製品ばかりで造られた住宅に携っているだけに、ゆるい屋根勾配と深い庇、木製建具、土壁や柿渋を塗った和紙等の仕上材、 裏山、そしてお隣の日本庭園をも借景にしているピクチャーウインドウ、トップライトを含めた開口部の取り方、意匠性の高い納まりなど、設計の素晴らしさを目の当りにして、とりつかれたように、ただただシャッターを切る私。

設計された方は、大久手計画工房の佐々木敏彦氏。“室内をつくることは同時に室外をつくることである”との言葉どおり、 和室の建具やテラスへの木製サッシを開け放すと、まるで森も住いの一部のようでした。この建物は、1997年の中部建築賞を受賞されています。

オーナーのインテリアセンスも極めていらして、しつらえがまた素適です。ジョージ・ナカシマのダイニングテーブルと椅子の存在感も、この空間にしっくりと納まり、居心地の良さになっています。
この辺りは裏手の川のおかげで、夏はずい分涼しいとのこと。ただ山あいなので、冬は雪が降るといつまでも溶けないとも。 季節の移り変りを五感で感じながら暮す家に、おじゃまさせていただいた私たちまでもが、豊かなエッセンスをいただいたひとときでした。