Interior Watching
「和骨董愛好家の暮し」
(2004.2)

昨年の春に、『晒柿』を訪問してくださったKさんから、嬉しいメールをいただきました。
覚王山の骨董屋 『メイク』 を検索されて来られたとのことで、「好きなもの、お気に入りの店、目指している事や、やっている事にリンクしている項目が多くて・・・」 といったご感想に、心地良いと感じる“暮らしのキーワード”が、これほどまでに重なり合うとはと、私も驚嘆し、net ならではの出会いに、「HP冥利に尽きる!」と思ったものです。

メールの行間から滲み出る、感性豊かな表現力とエネルギッシュな行動力に、てっきり “体力、好奇心ともにタフな女性” とばかり思っていたKさん。
実は、れっきとした男性で、“そばの横好き”というハンドルネームを持ち、“美味しい蕎麦屋”を求めてやまない蕎麦通でもありました。
フットワークがとても良く、愛車 Volvo で季節折々の見所をたずね、 蕎麦処を堪能し、時には 『晒柿』の “とっておきのshop” 巡りを、ご夫婦で楽しまれ、その様子を伺うのが、いつのまにか私の楽しみにもなりました。

添付画像の“しつらえ”から、「正統派の骨董 好き」でもあることも伺えましたし、今年開設されたHP 『そばの横好き』 で、古伊万里や染付けの蕎麦猪口、筒描のコレクションの素晴らしさに感嘆しつつ、密かに watching 心を募らせていました。
それが通じたのでしょうか、嬉しいことにKさんのお住い訪問が実現しました。





和箪笥と筒描器

今でこそ古民家の移築も増えてきましたが、ブームになる前から古民家に興味をお持ちだったというKさんご夫妻。 その当時、某住宅会社に相談すると、「移築は無理」と言われ、心ならずも諦めたそうです。
その後、住宅の計画と断念を経て、現在はマンションで、和骨董との暮しをエンジョイされています。
日本の骨董や伝統文化を、シンプルに採り入れた外国のインテリア誌を参考に、「モダンなしつらえを心がけている」とのことで、 玄関ホールから居間に入った正面のしつらえは、米沢箪笥と金継の施された古伊万里、そして渋い古典柄の帯とリトグラフとのコーディネートが、上質でモダンな雰囲気を醸し出しています。
明治時代の古い米沢箪笥(左上)相馬箪笥(右上)・小ぶりな庄内箪笥(左下)の、経年変化の美とも言える、使い込んだ欅の輝き、堅牢と装飾性を持たせた金具、 ”時代を受け継ぎ、敬意を払いながら人生をともに生きる”人の心を惹きつけてやまない、和箪笥の魅力でしょうか。

筒描(つつがき)とは、ケーキなどのデコレーションで使う絞り袋のようなものに、糊を入れて図案を描き、藍で染めたものとのことで、昔は家紋や花鳥風月を描いた風呂敷、夜着(よぎ)、布団地などに使われたそうです。
右上の和室は“丸に違い鷹羽”という文様で、二段を横に並べた相馬箪笥とのバランスとが、存在感のあるインテリアになって素敵です。


骨董の器といえば、古伊万里。丹精な文様の美しさは、鑑賞としての美はもちろん、 盛りつけた料理すらも美しく見せる、主役でありながら名脇役です。
右上の古伊万里は、『染付菱割図花唐草文』九寸深皿で、1730~1750年のものとのこと。 割れてもなお、金直し(金継ともいう)をして慈しむ心は、時を越えて伝承されていく骨董文化でもあります。 骨董と暮すということは、丁寧に暮すことにも繋がるのでしょうね。
さて、私の目には同じように見える文様も、愛好家の目には、その違いが歴然。(ここをクリックして見比べてください)
柿右衛門手五寸皿の方は、花びらの色のグラデーションが、隅まで丁寧に色づけされており、七寸皿の方は、花びらの先の方まで、色が届いておらず、 こうした仕事振りを観る目を養うのも、骨董の楽しみ方なのでしょうね。

『蕎麦の横好き』ゆえか、蕎麦猪口のコレクションは相当なもの。 ご自分のサイトでも紹介されていますが、骨董図鑑を紐解く、あるいはネット美術館を鑑賞するが如く、ひとつひとつの姿とデーターを丁寧に記されています。
骨董収集は、完成度の高く(傷が無く)数の揃ったものを集めるコレクターもいれば、傷はあれど時代の文様に惹かれて集める愛好家もいて、ご自分は後者だと仰っていました。
気に入った骨董を、ただ集めるのでなく、時代の背景や様式などへの探究心が強く、また、「今の時代を預っているだけで、後世に残していくことの責任を感じる」という考え方に、 骨董の奥の深さを教えていただきました。
“もの”との出会いは縁といいますが、骨董は人の縁を紡いでいく力を持っているのでしょうか。
先日紹介していただいた『古美術・神田』さんが手放された芽猪口・蛸唐草文を、 めぐり巡ってKさんの元にあるのに、HP『そばの横好き』を見て初めて知ったのだそうで、ちょっと感動させられたお話でした。


お気に入りに囲まれて


人様のお宅を拝見するというのは、心躍るもので、“share-gaki 好み” のインテリアに、嬉々としてしまいましたが、 この訪問のもう一つの楽しみは、すでに井筒屋珈琲店で顔なじみになった “そばの横好き”さんのご伴侶、“そばの縦好き” さんにお会いすることでした。
玄関のドアを開けるや、ずーっと前から友だちだったような感じがしてしまった“そばの縦好き” さんの笑顔!
そして、「類は友を呼ぶ」のでしょうか、用意してくださったお菓子と手土産のお菓子のどちらも『童庵』だったのには、もう、お互いにびっくり。

お二人の人柄も住まいも、ほんとに心地よくて、すっかり長居をしてしまった Interior watching でしたが、あなたも楽しんでいただけたでしょうか?

リビングに招かれるや、私の目に真先に飛び込んできたのは、キッチンとの間仕切も兼ねた水屋でした。
地震対策もあって入れ換えたという水屋は、骨董屋さんで“社員価格”で手に入れたとのこと。 土埃を落とし、両面使いの片側の戸が無かったので板を張り、それを二段を横に並べて、低い方に下駄を履かせて高さを揃えのだそうです。

この古色とポトスのグリーンが、ドッキリするほど美しく、 グラフ-Tさんで裏打ちして額装されたという古布の更紗、間仕切りの古い格子戸、観葉植物と骨董の器や家具とのコーディネートなど、 出会ったものに手をかけ、ご自分流にアレンジした、センスの良いインテリアを楽しんでいらっしゃいます。

また、低い家具と古い格子戸の間仕切で、LDKと和室を視覚的に繋げて、広く暮しているお二人の智恵にも感心させられ、インテリアコーディネータとしての興味が尽きませんでした。