Interior Watching
「しつらえを楽しむ家」
(2001.8)

Take Enjoyment In a Interior
  

住宅街の角地・30坪ちょっとの敷地に、15年の歳月をきざんだ記念樹の欅と、たっぷりの木々や季節の花が小さな森をつくり、住む人のセンスを感じさせる佇まいは、『和展』でもディスプレイセンスを披露した
30数年来の友人・T邸です。

竹本流インテリアのキーワードはテキスタイル。
玄関ホールは季節感を出して、藍染めの布でしつらえていました。
小物と組ませてタペストリーにしたり、カーテンや暖簾にと自分流に使いこなしています。

母親譲りでしょうか、長女のYukiさんは小さい頃から創造力豊かでした。
ネックレスをタッセルにするアイデアセンスは見習いたいもの。
インテリアも、今の世代を感じさせて素敵です。

2階のLDKは、20畳たっぷりのスペースで、小屋裏現しということもあって、とっても広々とした空間です。
日当たりも風通しも良く、飴色になった壁の杉板が、いい味になってインテリアと馴染んでいます。
訪れるたびに、しつらえが変わっているリビングは、ギャラリーそのもの。西日の当たる出窓は、和紙と布をスクリーンに見立てたり、家の中の緑も絶やしません。

下の写真は、丸いダンボールの筒に古文の印刷された和紙を貼り、竹本さんが柿渋を塗ったもの。最近は柿渋に凝っていて、布や服を染めたりもしているようです。

L型キッチンと収納付の1000*2000の大きなテーブルが団欒の中心になっていて、よく使う器はレンガと板を使って棚を作り、見せる収納にしています。
「料理の上手い主婦」のキッチンは、かくも美しく雑然?としているものなんですね。

リビングと食卓のペンダントは、セードを外して和紙とリースでアレンジ。なんだか帽子みたいでしょう。

2階にはLDKのほか、寝室とサニタリーもあり、一日の大半をここで過ごします。掃除道具はいつでも使えるように仕舞い込まず、アイロン台も布を掛けて置いてあるだけでインテリアににしてしまう住みこなし術は、お見事!

友人が、和室をDIYしました。
以前は、おばあちゃんが使っていた部屋で、日当りがいいはずなのに、表替えした畳がカビてしまい、 思い切って珪藻土を塗ることにしたのだそうです。
クロスを剥し、下地に石膏を塗って、少し赤みがかった珪藻土仕上げです。
『流木が息づく家』で使った珪藻土は、素人用に練ってあるものでしたが、 ここで使ったものは左官用なので、水加減をみながら下地と珪藻土の2度塗りでしたから、 8帖の和室と言えど、かなりハードだったようです。
その甲斐あってか、ぽってりした質感の、しかも彼女らしいテクスチャーがいい感じに仕上っています。
壁が仕上ったところで、襖紙もリニューアル。『紙の温度』のバザールで買った和紙は、 光沢のある柿渋染めのような紙で、表面がつるつるして扱いにくかったそうですが、紙用ボンドのムラが却って面白い文様になっています。
内法が高すぎて市販のスクリーンの丈が合わないからと、掃き出し窓の上に板を打ち付けて墨を塗ったものが欄間のようになり、板の間から漏れる光が、これまた面白い。
入口の踏み込みに、タペストリーと花器で床の間風に。このタペストリーは share-gaki 作で、 『風遊館』というモデルハウス用に彫った篆刻を掛軸風に作ったもので、 骨董屋で買った屏風などとともに、うまくしつらえています。